この記事の結論
- 「からくり」の正体はお金の流れです。費用の9割以上は公費(国が2分の1、都道府県が4分の1、残りを市町村)で、利用者の負担は原則1割まで。市町村民税非課税世帯は0円です
- 事業所の収入は「利用者が1日通うごとの報酬」です。東京23区で、実績がいちばん高い区分なら1人1日約13,500円。ただし単価は就職・定着の実績で決まり、最高と最低で約2.5倍の差があります
- 「儲かるのか」への答えは国の経営調査にあります。直近の収支差率(利益率にあたる数字)は7.9%で全サービス平均より高い一方、7年間では1.7%まで落ちた年もあり、収入の3分の2は人件費です
- 作業や実習に賃金が出ないのは、雇用契約がない「訓練の場」だからです。働いてお金を受け取る場が欲しい場合は、就労継続支援A型・B型という別の制度になります
就労移行支援を調べていると、「無料で使えるのはなぜ?」「事業所は利用者で儲けているのでは?」という疑問がわいてくると思います。この記事では、就労移行支援事業所のシャイニー錦糸町が、自分たちの収入の仕組みを、実際の単価と国の統計を使ってそのまま見せます。
「からくり」の正体はお金の流れです|費用の9割以上は公費
就労移行支援が無料や低い負担で使えるのは、費用の大半を公費が負担しているからです。サービスにかかったお金は「訓練等給付費」という公費として事業所に支払われ、その財源を国・都道府県・市町村が分け合っています。からくりと言っても、種も仕掛けも法律に書いてあります。
利用者が払わない分は、誰が払っているのか
お金の流れはこうなっています。利用者がサービスを使うと、かかった費用はまず市町村が支払います。そして市町村が支払った額の2分の1を国が、4分の1を都道府県が負担します(障害者総合支援法第94条・第95条)。残りの4分の1が、市町村の実質的な負担です。
つまり事業所から見ると、収入のほとんどは利用者の財布ではなく、税金から来ています。Yahoo!知恵袋には「職員の給料はどこから出ているのか」という質問が投稿されていますが、答えはこの給付費です。職員の給料も家賃も、大部分はここから出ています。

利用者の負担は「かかった費用の1割まで」で、多くの人は0円
では利用者は何を払うのか。法律上の上限は、かかった費用の1割です(同法第29条)。さらに世帯の収入に応じて、1ヶ月あたりの上限額が決まっています。
| 世帯の状況 | 月の負担上限 |
|---|---|
| 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
| 上記以外 | 37,200円 |
出典: 厚生労働省「障害者の利用者負担」
少し古い数字ですが、厚生労働省の2013年の資料では、2012年12月時点で、障害福祉サービス利用者の93.4%が無料で利用していました。0円になるかどうかは世帯の課税状況で決まるので、自分がどの区分になるかは、市区町村の障害福祉窓口で確認できます。
ここまでが「なぜ無料か」の答えです。すると次の疑問が出てきます。公費から、事業所には実際いくら入っているのか。ここから先は一般論をやめて、私たち自身の数字で話します。
事業所には利用者1人・1日あたりいくら入るのか|単価をそのまま見せます
定員20人以下・東京23区の事業所の場合、利用者が1日通うごとに約5,400円〜約13,500円が事業所に入ります。金額に幅があるのは、その事業所の「就職実績」で単価が変わるためです。順番に見ていきます。
報酬は「単位数×地域の単価」で決まる
事業所が受け取る報酬は、「単位」という点数で決まっています。介護保険と同じように点数で決まる仕組みで、サービスごとに単位数が定められ、そこに地域ごとの単価を掛けた金額が支払われます。
1単位の単価は基本10円で、人件費の高い地域ほど少し高くなります。就労移行支援の場合、いちばん高い「一級地」(東京23区)で11.18円、地方の「その他」地域で10.00円です(厚生労働省告示第539号)。シャイニー錦糸町のある墨田区は23区内なので、1単位=11.18円で計算されます。
単位数は「就職した人が半年続いた割合」で7段階に分かれる
肝心の単位数は、次の表で決まります。前年度までに就職した利用者のうち、就職後6ヶ月以上続いた人の割合(定着率)が高い事業所ほど、1日あたりの単位数が高くなります。
| 就職後6ヶ月以上の定着率 | 基本報酬(1人1日あたり) |
|---|---|
| 5割以上 | 1,210単位 |
| 4割以上5割未満 | 1,020単位 |
| 3割以上4割未満 | 879単位 |
| 2割以上3割未満 | 719単位 |
| 1割以上2割未満 | 569単位 |
| 0割超1割未満 | 519単位 |
| 実績なし | 479単位 |
出典: 厚生労働省・就労移行支援の事業説明資料(定員20人以下の場合)
最高の1,210単位と最低の479単位では、約2.5倍の差があります。同じ「就労移行支援」の看板でも、実績によって受け取るお金がここまで違う。これがこの制度のいちばん大きな特徴です。
実額に換算すると|シャイニーのある東京23区の場合
表の単位数に、さきほどの単価を掛けると実際の金額が出ます。定着率5割以上の事業所に利用者が1日通うと、1,210単位×11.18円で約13,500円。実績なしの事業所なら479単位×11.18円で約5,400円です。仮に月20日通えば、定着率5割以上の事業所なら利用者1人あたり月に約27万円、実績なしなら約11万円が入る計算になります。
この基本報酬のほかに、支援の内容に応じた加算という上乗せもありますが、収入の柱はいま見た基本報酬です。私たちシャイニー錦糸町も、まさにこの表とこの単価で運営されています。「利用者1人につきいくらもらっているのか」という知恵袋でよく見る疑問の答えは、告示に載っていて、誰でも確認できる公開情報です。
報酬は「就職させて、半年続かせた実績」で毎年変わる
この「定着率で決まる報酬」は、2018年度の報酬改定で入った仕組みです。それまでの報酬は定員規模などで決まっていましたが、この年から「就職後6ヶ月以上定着した人の割合」で決まる形に変わりました(厚生労働省・平成30年度報酬改定)。
この変更で、事業所にとって何が得かが大きく変わりました。利用者を長く在籍させて通所日数を稼ぐと、目先の報酬は入りますが、就職者が出ないので翌年度の単価が下がります。逆に、利用者を早く就職させて半年定着させれば、その人の通所報酬はなくなっても、事業所全体の単価が上がります。「就職させない方が儲かる」という噂が今の制度で成り立つのかどうかは、「ひどい」という評判を検証した記事で数字を追って確かめているので、そちらを読んでみてください。
で、儲かるのか|国の経営調査の数字を見る
「仕組みは分かった。結局、儲かっているのか」。この疑問には、厚生労働省が事業所の決算を集めて公表している「障害福祉サービス等経営実態調査」で答えられます。直近の調査では、就労移行支援の収支差率は7.9%でした。
直近は7.9%。全サービスの平均より高い
収支差率は、収入から支出を引いた残りが、収入の何%かという数字です。会社でいう利益率にあたります。2022年度決算で、就労移行支援は7.9%。障害福祉サービス全体の平均は5.3%なので、平均より高いのは事実です。金額にすると、1事業所あたりの年間の収支差は平均で約214万円でした。
正直に言えば、平均より利益が出ているのは数字のとおりです。ただ、この数字には続きがあります。
7年間では1.7%まで落ちた年もある
同じ調査を7年分並べると、こうなります。
| 決算年度 | 就労移行支援の収支差率 | 全サービス平均 |
|---|---|---|
| 2016年度 | 9.5% | 5.9% |
| 2017年度 | 3.7% | 3.9% |
| 2018年度 | 1.7% | 3.9% |
| 2019年度 | 5.5% | 5.0% |
| 2020年度 | 6.7% | 4.7% |
| 2021年度 | 3.2% | 5.1% |
| 2022年度 | 7.9% | 5.3% |
出典: 厚生労働省「障害福祉サービス等経営実態調査」(各回)
目を引くのは2018年度の1.7%です。さきほど見た「定着率で単価が決まる仕組み」が入った年です。この改定で、就職の実績がない事業所の報酬は下がりました。9.5%から1.7%まで落ちて、また戻る。安定して儲かり続ける商売というより、制度の見直しのたびに揺さぶられる事業だというのが、7年分を見た実感に近いと思います。
収入の3分の2は人件費。事業所の数はむしろ減っている
支出の中身も見ておきます。2022年度決算で、収入に対する給与費(職員の人件費)の割合は66.4%でした。入ってきたお金の3分の2は、支援員などの給料に消えています。就労移行支援は建物や設備ではなく、人で支援するサービスだからです。
もう1つ、手がかりになる数字があります。事業所の数です。厚生労働省の調査では、就労移行支援の事業所数は2019年10月の3,014から、2022年に2,928、2023年には2,870へと減っています。「誰でもボロ儲けできる制度」なら参入が増えて数は伸びるはずですが、実際には撤退する事業所の方が多いのが現状です。儲かる事業所と続かない事業所の差が、はっきり出る制度です。
「タダ働きさせられる」の正体|雇用契約がない訓練の場だから
お金の流れでもう1つよく聞かれるのが、「作業や実習をしているのに、なぜお金が出ないのか」という疑問です。答えは制度の位置づけにあります。就労移行支援では、利用者と事業所の間に雇用契約がありません。ここは就職の準備をする「訓練の場」で、「働く場」とは位置づけられていません。
就労移行支援・A型・B型は、お金の関係で見ると別物です
似た名前の制度と並べると、違いがはっきりします。
| 制度 | 雇用契約 | 利用者が受け取るお金 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 就労移行支援 | なし | 原則なし | 一般企業への就職を目指す訓練 |
| 就労継続支援A型 | あり | 賃金(2021年度の全国平均は月81,645円) | 雇用契約を結んで働きながら訓練 |
| 就労継続支援B型 | なし | 工賃(同・月16,507円) | 雇用が難しい方の生産活動 |
出典: 厚生労働省「障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス」、「令和3年度工賃(賃金)の実績について」
国が賃金・工賃の実績報告を義務づけているのもA型とB型だけで、就労移行支援はそもそも対象外です。「いま収入が欲しい」が最優先なら、就労移行支援よりA型・B型を検討する方が目的に合います。
実習が無給なのはなぜか。納得できないときに確かめること
知恵袋には「1週間の企業実習に行くが無給。採用の見込みもないのに行くべきか」という相談が投稿されています。実習が無給なのは、上で見たとおり、実習も労働ではなく訓練の一部と位置づけられているからです。
ただ、「訓練だから」で全部をのみ込む必要はありません。その実習が自分の就職にどうつながるのかは、個別支援計画という書類に書かれているはずです。目的の見えない作業が続くと感じたら、計画の見直し面談で確かめられます。確かめ方は「意味ない」という声を検証した記事に書きました。また、通所中の生活費をどうやりくりするかは「やめとけ」と言われる理由を検証した記事で扱っています。
この仕組みを知ったうえで、どう使うと得か
ここまでの話を利用者の側から見ると、結論は1つです。この制度は、利用者が就職して半年続いたときに、事業所の報酬が最も高くなる作りです。つまり「早く就職して、長く続ける」という利用者の目標と、事業所の利益は、同じ方向を向いています。
事業所の利益と利用者の利益は「就職して定着」で一致している
だから、仕組みの上では、事業所が利用者を囲い込む理由はありません。それでも、通所日数だけを稼ぐような事業所への不満が実際に投稿されているのも事実で、それは制度の狙いから外れたやり方です。知恵袋には「就職したいと伝えても就活をさせてもらえない」という相談もありました。そうした事業所を見学の段階で見分ける方法は、「ひどい」評判の検証記事にまとめています。
2025年10月から「就労選択支援」が始まっています
制度にも、利用を始める前の新しいサービスが1つ加わりました。2025年10月に始まった「就労選択支援」です。就労移行支援やA型・B型を使う前に、本人の力や適性を客観的に評価して、働き方の選択を手伝うサービスで、厚生労働省の資料には「就労の可否を判断したり、どの就労系障害福祉サービスを利用するかの振り分けを行うものではない」と明記されています。事業所の都合ではなく本人の選択を大事にする方向に、制度は動いています。このサービスの中身と使える人の範囲は、向いてない人・向いている人の記事でくわしく扱っています。
私たちが仕組みを開示する理由
最後に、事業所としての立場を言っておきます。この記事の単価も収支の数字も、全部公開情報です。隠せない仕組みなのだから、先に見せてしまった方が、お互いに話が早いと考えています。
見学に行ったら、「定着率はどれくらいですか」「基本報酬はどの区分ですか」と聞いてみてください。この質問に数字で答えられる事業所は、実績を隠していない事業所です。シャイニー錦糸町は、この質問を歓迎します。
よくある質問
就労移行支援が無料で使えるのはなぜですか?
費用の9割以上を公費(国が2分の1、都道府県が4分の1、残りを市町村)が負担しているからです。利用者の負担は法律上かかった費用の1割までで、さらに世帯収入に応じた月の上限があり、市町村民税非課税世帯は0円です。無料なのは制度でそう決まっているからで、事業所側の仕掛けではありません。
事業所は利用者1人あたりいくら受け取っていますか?
利用者が1日通うごとに、基本報酬として479〜1,210単位(定員20人以下の場合)を受け取ります。1単位は約10円(東京23区は11.18円)なので、1人1日あたり約5,400円〜約13,500円です。単価は「就職した人が半年以上続いた割合」で毎年度決まります。
就労移行支援は「障害者ビジネス」なのですか?
国の調査では直近の収支差率は7.9%で、利益が出ている事業所は実際にあります。ただし報酬は就職・定着の実績で決まるため、利用者を就職させないまま稼ぎ続けるのは難しい仕組みです。収入の3分の2は人件費で、事業所数はここ数年むしろ減っています。
実習や訓練中の作業に給料が出ないのはおかしくないですか?
就労移行支援は雇用契約を結ばない訓練の場なので、作業や実習に賃金は発生しません。働いてお金を受け取りたい場合は、雇用契約を結ぶ就労継続支援A型(2021年度の平均賃金は月81,645円)などの別制度があります。実習の目的に納得できないときは、個別支援計画の見直し面談で確かめられます。
まとめ|お金の流れを説明できる事業所を選べばいい
この記事で見せた数字を整理します。
- 無料の理由は公費です。費用の9割以上を国・都道府県・市町村が負担し、利用者の多くは0円で使えます
- 事業所の収入は通所1日ごとの報酬で、東京23区なら1人1日約5,400円〜約13,500円。単価は就職・定着の実績で約2.5倍変わります
- 直近の収支差率は7.9%で平均より高い一方、7年間では1.7%の年もあり、収入の3分の2は人件費です
- 賃金が出ないのは雇用契約がない訓練の場だからで、働いて収入を得たい場合はA型・B型という別の制度があります
仕組みを知ると、事業所選びの物差しが1つ増えます。お金の流れを聞かれて、数字で答えられる事業所かどうか。サービスの中身を見学の短い時間で見抜くのは難しくても、この質問なら答え方に事業所の姿勢が出ます。
シャイニー錦糸町(錦糸町駅近くの就労移行支援事業所)では、AI・Webマーケティングの専門訓練と在宅訓練を行っています。定着率も報酬区分も、聞かれたら数字でお答えします。「自分の場合はいくらかかるか」も、見学の場で確かめてみてください。
この記事の情報について
本記事は、就労移行支援事業所シャイニー錦糸町が、公的資料と、Yahoo!知恵袋などに公開されている相談をもとに作成しています。制度の数値は下記の一次資料で確認しています(2026年8月時点)。
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(第29条・第92条・第94条・第95条): https://laws.e-gov.go.jp/document?lawid=417AC0000000123
- 厚生労働省「障害者の利用者負担」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan1.html
- 厚生労働省「障害者総合支援法について」(2013年・利用者負担の実績): https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000036ouk-att/2r98520000036ozu.pdf
- こども家庭庁長官及び厚生労働大臣が定める一単位の単価並びに厚生労働大臣が定める一単位の単価(平成18年厚生労働省告示第539号): https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc_keyword?keyword=%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E5%A4%A7%E8%87%A3%E3%81%8C%E5%AE%9A%E3%82%81%E3%82%8B%E4%B8%80%E5%8D%98%E4%BD%8D%E3%81%AE%E5%8D%98%E4%BE%A1&dataId=83aa8493&dataType=0&pageNo=1&mode=0
- 厚生労働省・就労移行支援の事業説明資料(基本報酬単位数表): https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000571840.pdf
- 厚生労働省「平成30年度障害福祉サービス等報酬改定の基本的な方向性について」: https://www.mhlw.go.jp/content/12204500/0000187492.pdf
- 厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果」: https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001167616.pdf
- 厚生労働省「令和2年障害福祉サービス等経営実態調査結果」: https://www.mhlw.go.jp/houdou/2020/12/dl/h1215-2.pdf
- 厚生労働省「障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス」: https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000865126.pdf
- 厚生労働省「令和3年度工賃(賃金)の実績について」: https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001042285.pdf
- 厚生労働省・就労選択支援関係資料(令和7年4月21日事務連絡): https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001489152.pdf
- 厚生労働省「社会福祉施設等調査」(事業所数、e-Stat): https://www.e-stat.go.jp/
- 引用した相談: Yahoo!知恵袋の公開投稿(2014〜2025年)
